[#002]Expression3のこと(2003/6/8)
現在、私がイラスト描きのメインで使っているのがExpression3です。パソコンによるイラストの主流はPhotoshopやIllustratorで、Expression3は有名でないし、参考書もあまりないので、買おうかどうしようか迷っている方は多いかもしれません。私が実際に使っての感想を参考にしてください。
Expression3の利点
・細かい調整が可能なBスプライン曲線
Illustratorというとベジェ曲線が有名です。しかしベジェは少々、いや、けっこう使いにくいものです。特に、複雑な曲線、細部の表現になるとコントロールがかなり難しくなります。
Expression3ではBスプラインという方法で曲線を描きます。この方法では、ポイントを指定していけば、そのポイントを滑らかにつないだ曲線が描画されます。曲線はポイントの上を必ず通るわけではないので、少々慣れが必要ですが、微調整はポイントの位置調整だけでできるのでベジェよりもはるかに扱いやすいのです。ベジェの場合はアンカーポイントだけでなく、アンカーも調整しなければならないので非常に手間がかかります。Illustratorでは、ベジェにかなり習熟していないと自由に曲線は描けません。Expression3では、習熟までの時間も、実際の作業の手間もIllustratorよりはるかに短くてすみます。
最近、「ああ、これはIllustratorで描いてるな」とすぐわかるイラストが多いように思います。これは、ベジェ曲線が単調になりがちというIllustratorの欠点があるからです。もちろん、ベジェ曲線でもかなり複雑な線を描くことはできますが、そこまでやる人は少ないみたいですし、同じやるならBスプラインの方がはるかに簡単です。私のイラストを見ていただければ、複雑な曲線もなめらかな曲線もうまく表現できているのがわかると思います・筆圧機能で線に表情をつけられる
Expression3で便利なのは、ひとつの線の中で線幅を自由に変えられることです。「筆圧」という機能で線幅を自由に変更できます。これを使えば、描き始めと描き終わりが細くなるペンのような線を描くことができます。線幅が同じ線というのはどうしても単調になってしまいます(これもIllustratorでよくある例)。漫画の絵が表情豊かに見えるのは、ペンによって線の太さに強弱がつけられるからです。
この2点がExpression3を利用する最大の理由です。(Illustratorに比べて)これらだけでも作業効率は上がり、絵の表現の幅も広がります。
Expression3の欠点
・色の管理がややこしいです。IllustratorやPhotoshopのようなカラーパレットがないので、とても使いにくいのです。私も、Expression3で輪郭と大ざっぱな色付けをして、最終的な彩色はIllustratorでやることが多いです。これは改良してほしい部分です。またIllustratorの「スウォッチ」のような機能もほしいです。
・筆圧パレットは便利なのですが、もうちょっと細かいコントロールが出来るようにしてほしいです。もっとパレットを大きくする、あるいは数値入力ができるようにしてほしいです。
・「グラデーションメッシュ」と「ブレンド」機能がほしいです。
私は以前はPhotoshopを使っていました。Expression3を使うことで、Photoshopと比べて作業効率が上がったかというと、あまり変わらないような気がします。Photoshopでは輪郭線の修正やマスクの作成など細かい作業がありますが、Expression3でも線の修正やクリッピングマスクの作成は必要になるので、作業自体は似たようなものです。
ただ、Photoshopと違って、後で修正がしやすいこと、画像を拡大しても解像度が落ちないことは大きな利点です。Expression3はそれほど有名ではありませんが、とても使えるアプリケーションで、もっとユーザーが増えてほしいと思います。Illustratorよりもよほど使いやすいことは確かです。私自身のExpression3の稼働率が非常に高いことがその証拠だと思います。
このページでは、私が実際に仕事として描いたものを紹介しています。ほとんどの作業はExpressionでやっていて、最後の色調整、線幅調整といったところだけIllustratorを使っているという場合がほとんどです。作業の90%はExpressionではないでしょうか。